「副業」ガイドラインの見直し

 

 

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コロナの影響で自宅勤務の機会が増えた皆さんの中には,通勤やオフィス作業が減って余裕ができた時間を使って兼業や副業をしたい,って思っている人も多いことでしょう。政府の働きかけもあって,申請や報告は必要とするものの,副業・兼業を認める会社はだいぶ多くなりました。私も事業者から就業規則の見直しの相談を受ける機会が増えてきました。

ただ,リモートワークのもとで副業まで認めることで労務管理に不安を持つ経営者は多いようです。「ちゃんと仕事しているのか」が更にチェックできなくなってしまうのではないか,と。時間以外の指標で仕事の成果を評価しているつもりではあっても,実際に仕事をしている姿が見えない状況での確かな仕組み作りが企業経営には求められています。

厚生労働省が,「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を見直すと発表しました。副業の定義を明確にし(労働者が更に別な使用者と労働契約を締結した場合を「副業」とする),企業は,労働者の自己申告に基づいて本業・副業の通算労働時間を管理し,副業社員には定期的に健康管理のための面談を行うことなどが規定されそうです。

ちなみに,企業の責任軽減のためなのか,本業・副業の合計「所定」労働時間が1ヶ月平均労働時間上限である80時間を下回らない場合(これも労働者の自己申告)には労働時間管理は不要とする案もあるそうです。しかし,副業を認める企業の立場からすれば,社員の副業も含めた「実」労働時間を把握しその健康を守ることは必須でしょう。経済界に対する厚労省の余計な「忖度」のような気もしないでもありません。

9月にも発表される予定の新ガイドラインに注目したいと思います。

組織犯罪なの?

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IR汚職事件で,衆議院議員が証人等買収容疑で再逮捕されました。

自分が収賄罪に問われている事件で贈賄側の相手を買収して口止めするようなことは,「してはいけないこと」だよな,とは,なんとなく常識のように思いますが,実は,この「証人等買収」という犯罪は刑法上の罪ではなく,「組織犯罪処罰法」(正式名称は,「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」)という法律が,2017年に改正されて創設された犯罪です。

この法律ができるまでは,自分が罪に問われている事件の証人を買収しても,その証人が実際に嘘の証言をしない限り,罪には問われていませんでした。「本当か!?」と思われるかもしれませんが,本当です。いろいろ理屈はあるのですが,「自分が罪に問われているんだから,証人を買収しようとしてもそれは心情的にやむを得ず,責任は問えませんな」という価値判断からのようです。

ところが,世界で頻発する組織的な犯罪やテロが,2020年の東京オリパラの開催を契機に日本でも起きるのではないか,国際犯罪などを各国の協力で防止するための「国際組織犯罪防止条約」に日本は未加盟であり,テロ等の未然防止のために,法改正を急がなければならない,と日本政府が強力に進めた結果,2017年に「組織犯罪処罰法」にテロ等準備罪を創設されました。そして,その際に,組織的な犯罪における証拠隠滅を防止するために,この証人等買収罪も創設されたのです。証人等買収罪では,買収行為だけでも処罰の対象となり,従来のように証人の偽証を要しないという点がポイントです。

しかし,この証人等買収罪の規定(第7条の2)を見ると,殺人罪などの重い犯罪や贈収賄罪などの単独実行が可能な犯罪についての証人買収も処罰の対象となっています。つまり,この規定により,「組織犯罪における司法妨害の防止」のためと政府が説明している法改正の趣旨を超えて,証人買収を広く処罰できるようになってしまっているのです。

その結果,「証人等買収罪」の創設後第1号適用事件は,今回の衆議院議員による買収事案となりました。

この議員もおそらく与党議員としてこの法改正に賛成はしているのでしょうが,まさか,第1号適用事件で自分が逮捕されるとは思ってもみなかったでしょうね。自分がテロ事件に関与するなどとは想像もつかなかったでしょうから。

今は,留置場で,こう思っているのではないでしょうか。

「これって組織犯罪なの!?」

 

 

メール交換で契約

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コロナで非常事態宣言が出されたあの時期,在宅勤務が推奨されたにもかかわらず,契約書や社内書類に押印しなければならない,という理由で,出社を余儀なくされるという切ない思いをされた方が(かなり多数)いらっしゃいましたね。皆さんの職場では,その後,契約書や社内手続の電子化に踏み出されましたか。それとも,「のど元過ぎれば・・・」で,結局変わらず,紙文化からの脱却は遠い「夢」でしょうか。

契約書は,あとで相手が「そんな契約していない」と手のひら返ししたときに,「いやいや,ちゃんとこうやって合意しているんだから」と,相手の眼前に突き付ける必要があります。ですから,両者が同意したものをその改ざんされることなく保管しておかなければなりません。

しかし、これからのウイズコロナの時代に,相変わらず契約書を紙で作成して押印して郵送して保管するというのはもはや現実的ではありません。

 

このような現場の切実な状況を受けて, 電子契約のサービスが各社から提供されています。いずれのサービスでも,その契約が署名者本人により承認され,承認後に内容が改変されていないことを保証するものであることには変わりないのですが,保証の程度がより高いものと普通のものとがあり,前者が「電子署名型」,後者が「電子サイン型」といわれています。

電子署名型」は,電子認証局に署名者の電子署名を予め登録しておき,契約をする際には認証局発行の証明書付きで電子署名することで,本人が特定の日時にその署名を行い,その後に改変が加えられていないことを電子認証局が保証する仕組みです。信頼性ある認証局が発行した証明書を利用するため保証の程度は高いのですが,契約者双方の署名について予め証明書を取得する費用と手間がネックです。

これに対して,「電子サイン型」は,署名者が特定の日時にシステム上で承認した契約書のデータを電子メールで各署名者のアドレスに送りそのログをシステム上に記録しておくことで,双方の署名者がその契約書に署名した証拠とする仕組みです。これは予め認証局の証明書を用意しておく必要がなく,費用もシステム利用料だけで済むのが利点です。

 

しかし,いずれのサービスも,契約本数によって月額10万円~100万円程度の利用料がかかります。「契約管理にそんなコストはかけられない」という企業も多いはず。

リスク(契約の成立や内容に争いが生じる可能性)とメリット(費用が掛からず手間の負担も軽い)のバランスを考える必要はありますが,日々の契約数が多く1件あたりの契約金額もさほど高くないときには,「電子メール方式」が適しています。

実際,電子メールで交換した意思表示により契約の存在を認める裁判例もあるのです。

電子メール本文に契約内容を漏れなく明記して相手方署名者に「申込メール」を送信してそのメールをヘッダ情報と共に保管し,相手方に元メール参照付きで「承認メール」を送ってもらいそのメールもヘッダ情報と共にPDFで保管しておく,という方法をお勧めです。

 

知ってましたか?

お盆の帰省について西村経済再生担当大臣や一部の知事が慎重な姿勢を見せたり自制を求めています。田舎に帰省して久しぶりに家族と会うのを楽しみにしていた人には,春先から季節行事のキャンセルが続き,「お盆よ,お前もかー」という状況でしょう。Go To トラベル キャンペーンとの整合性も相変わらず図られておらず,日本政府のブレーキとアクセルを同時に踏んで,まさにイケてないドリフト走行の感を呈しています。

 

お盆をググると,この行事は日本古来の祖先崇拝と仏教とが混淆した日本独特の習慣だそうです。毎年8月のこの時期を迎えると,ほのかなお線香の香りと共に「鎮魂」という言葉が胸に迫る。そんな気持ちを持つ方も多いのではないでしょうか。

2つの原爆投下の日(8月6日広島,8月9日長崎),日航機墜落事故慰霊の日(8月12日),そして終戦記念日(8月15日)。

多くの命が失われた過去の歴史を改めて認識し,2度と悲惨な事実を繰り返さない決意とともに,犠牲者に思いを馳せる季節ですね。

8月15日は日本武道館で毎年,全国戦没者追悼式が政府主催で開催されます。私は,少し前まで,この式は天皇皇后,政府代表者や戦災者遺族が出席して広く戦争犠牲者を追悼し平和を祈念する行事だと思っていたのですが,実はそうではないことを,みなさんは知ってましたか。

この式で命名されている「戦没者」とは軍人,軍属,戦闘参加者など,何らかの形で国家の戦争行為に関与する中で亡くなった方を指しています。 つまり,戦没者追悼式というのは,戦時中の公務(戦争戦闘の遂行)殉職者を追悼する式なのです。

戦傷病者戦没者遺族等援護法」という法律でも,「戦没者」を概要上記の人たちと定義し,軍人,軍属などの戦没者や戦傷病者などに対する弔慰金,障害年金,遺族年金の支給を定めています。従って,例えば空襲に遭って被災した民間人や沖縄の地上戦で防空壕に逃げ込んで火炎放射機で焼き殺された人や敵国のスパイと間違えられて裁判も受けずに日本軍人によって処刑された地元民などは「戦没者」にはあたらず,このような戦争犠牲者(死亡者だけで終戦までに80万人以上)の遺族や傷病者は法律上の特別の援護を全く受けることができずに今日まで来たのです。

最高裁判所も,「戦争犠牲者ないし戦争損害は,国の存亡に関わる非常事態のもとでは国民の等しく受忍しなければならなかったところであって,これに対する補償は憲法の全く予想しないところというべきであり,従って,右のような戦争犠牲ないし戦争損害に対しては単に政策的見地からの配慮が考えられるに過ぎないもの,すなわちその補償のために適宜の立法措置を講ずるか否かの判断は国会の裁量的権限に委ねられるもの」(昭和62年6月26日名古屋空襲慰謝料等請求事件判決)との,いわゆる「受忍限度論」を示して,このような国会,政府の対応を追認しました。

戦争被害者に対するこのような国の態度は国際的に見ても特異です。

平和のための追悼は軍人,民間人を問わず戦争のために犠牲となった人たちを追悼する場であるべきでしたし,補償も広く戦争犠牲者に対する償いとして支給されるべきでした。

ちなみに,総務省が,全国各地の民間人を含む戦争被害者追悼施設を案内するホームページを設けています。 

総務省|一般戦災死没者の追悼

今年の8月15日には,近くの追悼施設を訪れて,尊い犠牲に想いを馳せたいと思います。

 

GPS

暑いですねー。

私の事務所は通りに面したビルの3階なのですが,通り側のベランダの目の前2メートルほど先に電信柱があり,入居通所から眺望(大したものではないですが)を邪魔していることを勝手に不満に思っていたのですが,最近はここに蝉が張り付いていて,日中になるとウルサいのです。たぶん,シャーという鳴き声なのでたぶんクマゼミで,アブラゼミのような力んだ声ではないのですが,それでもかなり暑苦しさを感じるので,この夏,先が思いやられます。蝉のいないところに行きたい・・・。

 

さて,妻や元交際相手の自動車にGPS発信機を取り付けて移動場所などの情報を取得した行為がストーカー行為規制法で規制されるストーカー行為の「見張り」に該当するかが争われた裁判で最高裁判所が判決を下しました。最高裁は,「見張り」に該当するというためには,「機器を使う場合でも、相手の住居の付近といった一定の場所で、そこにいる相手の動静を観察する行為が必要だ」としたうえで「移動する車の位置情報は「一定の場所にいる相手の動静に関する情報」とはいえない」との判断を示し,単にGPSを使って所在や動静を遠隔監視するだけでは「見張り」に該当しないとしました。

平成30年(あ)第1528号↓

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/610/089610_hanrei.pdf

平成30年(あ)第1529号↓

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/611/089611_hanrei.pdf

 

GPS最高裁というと,平成29年に,警察官が裁判所の令状を取らずに,事件関係者の自動車にGPS装置を取り付けて所在や立ち寄り場所に関する情報を取得したことについて,「車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であり,令状がなければ行うことができない強制の処分である。」と判じた判決を思い出します。

平成28年(あ)第442号

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/600/086600_hanrei.pdf

もちろん,今回の判決は被告人の行為が犯罪構成要件に該当するか,という罪刑法定主義の観点から犯罪の成否が問われているので厳格な文理解釈が求められる局面ですから,捜査機関による違法な人権侵害が問題となった平成29年判決とは求められる価値判断の基準が異なりますし,最高裁の判断は結論においてバランスのとれたものといえるでしょう。

なお,最高裁が,第1258事件で,「被告人は,妻が上記自動車を駐車するために賃借していた駐車場においてGPS機器を同車に取り付けたが,同車の位置情報の探索取得は同駐車場の付近において行われたものではないというのであり,また,同駐車場を離れて移動する同車の位置情報は同駐車場付近における妻の動静に関する情報とはいえず,被告人の行為は上記の要件を満たさない」として,位置情報の取得場所や対象自動車の位置と,GPS機器を取り付けた場所との近接性を判断基準としているように思われるので,近接性の範囲をどの程度とするかによって,「見張り」に該当するか否かの結論は変わり得るとは思います。

また,他人の自動車や所持物にGPS発信機を付着させてその位置情報を網羅的に取得する行為はプライバシー権を侵害する行為であり,不法行為として損害賠償請求の対象となることも争いがないところだと思います。

 

夏がきた!

関東地方でも梅雨が明け,夏が到来しました。

夏男,夏女のみなさま,おめでとうございます。

が,相変わらずの三密回避,自粛ムード。夏のムンムンとした人いきれの立ち込めた夏本来のワクワクする雰囲気は街なかにもお店にもありません。ひたすら,暑く不安な日々です。

そんな中,私も一時は(了解。正直に言います,一時代は)受験生だった司法試験が,今年はコロナの影響で約3ヶ月も繰延べられて,8月12日から中休日を挟んで4日間で実施されます。想定外の事態に,受験生も不安の日々を送られたと思いますし,まさか夏本番のこの時期に論文書くなんて,昔の司法試験の地獄の論文試験(それでも開催は7月だった)を思い出さずにはいられません。受験者数は4100人。おじさんとしては,合格者数が若干気になりますが,受験生はとにかく目の前の問題に集中して全力を出し切って欲しいものです。

私は,非常事態宣言が解除された直後の今年の6月に,横浜の郊外で法律事務所を始めたのですが,今の来客状況が,コロナの影響で皆が外出を避けているために本来あるべき数より少ないのか,自分の営業努力では元々こんなものなのか,よくわかりません。弁護士への相談は元々敷居が高いみたいで,自分ではその弁護士にまつわる負のイメージを打ち破って親しみやすく安心して相談できる弁護士像を打ち立てたいと思っていますが,これは自分で狙って得られるものでもないですしね。一人一人のお客様に誠実に対応することの大切さを意識していこうと日々思っています。

このブログでは,そんな横浜郊外で事務所を経営する新米独立弁護士の日常を綴ってまいります。

よろしくお願いします。