知ってましたか?

お盆の帰省について西村経済再生担当大臣や一部の知事が慎重な姿勢を見せたり自制を求めています。田舎に帰省して久しぶりに家族と会うのを楽しみにしていた人には,春先から季節行事のキャンセルが続き,「お盆よ,お前もかー」という状況でしょう。Go To トラベル キャンペーンとの整合性も相変わらず図られておらず,日本政府のブレーキとアクセルを同時に踏んで,まさにイケてないドリフト走行の感を呈しています。

 

お盆をググると,この行事は日本古来の祖先崇拝と仏教とが混淆した日本独特の習慣だそうです。毎年8月のこの時期を迎えると,ほのかなお線香の香りと共に「鎮魂」という言葉が胸に迫る。そんな気持ちを持つ方も多いのではないでしょうか。

2つの原爆投下の日(8月6日広島,8月9日長崎),日航機墜落事故慰霊の日(8月12日),そして終戦記念日(8月15日)。

多くの命が失われた過去の歴史を改めて認識し,2度と悲惨な事実を繰り返さない決意とともに,犠牲者に思いを馳せる季節ですね。

8月15日は日本武道館で毎年,全国戦没者追悼式が政府主催で開催されます。私は,少し前まで,この式は天皇皇后,政府代表者や戦災者遺族が出席して広く戦争犠牲者を追悼し平和を祈念する行事だと思っていたのですが,実はそうではないことを,みなさんは知ってましたか。

この式で命名されている「戦没者」とは軍人,軍属,戦闘参加者など,何らかの形で国家の戦争行為に関与する中で亡くなった方を指しています。 つまり,戦没者追悼式というのは,戦時中の公務(戦争戦闘の遂行)殉職者を追悼する式なのです。

戦傷病者戦没者遺族等援護法」という法律でも,「戦没者」を概要上記の人たちと定義し,軍人,軍属などの戦没者や戦傷病者などに対する弔慰金,障害年金,遺族年金の支給を定めています。従って,例えば空襲に遭って被災した民間人や沖縄の地上戦で防空壕に逃げ込んで火炎放射機で焼き殺された人や敵国のスパイと間違えられて裁判も受けずに日本軍人によって処刑された地元民などは「戦没者」にはあたらず,このような戦争犠牲者(死亡者だけで終戦までに80万人以上)の遺族や傷病者は法律上の特別の援護を全く受けることができずに今日まで来たのです。

最高裁判所も,「戦争犠牲者ないし戦争損害は,国の存亡に関わる非常事態のもとでは国民の等しく受忍しなければならなかったところであって,これに対する補償は憲法の全く予想しないところというべきであり,従って,右のような戦争犠牲ないし戦争損害に対しては単に政策的見地からの配慮が考えられるに過ぎないもの,すなわちその補償のために適宜の立法措置を講ずるか否かの判断は国会の裁量的権限に委ねられるもの」(昭和62年6月26日名古屋空襲慰謝料等請求事件判決)との,いわゆる「受忍限度論」を示して,このような国会,政府の対応を追認しました。

戦争被害者に対するこのような国の態度は国際的に見ても特異です。

平和のための追悼は軍人,民間人を問わず戦争のために犠牲となった人たちを追悼する場であるべきでしたし,補償も広く戦争犠牲者に対する償いとして支給されるべきでした。

ちなみに,総務省が,全国各地の民間人を含む戦争被害者追悼施設を案内するホームページを設けています。 

総務省|一般戦災死没者の追悼

今年の8月15日には,近くの追悼施設を訪れて,尊い犠牲に想いを馳せたいと思います。